| 雄島について |
1.見仏上人と見仏上人の旧跡・見仏堂 |
見仏上人は、長治元年(1104年)伯耆国(鳥取県)から雄島に渡った僧で、瑞巌寺発行の堀野宗俊著「瑞巌寺の歴史」に、「延福寺時代約四百年を通じ、開山の慈覚大師を除き、一番著名な高徳の僧は、雄島に住した見仏上人であろう」と記される程の人物である。 見仏上人の旧跡・見仏堂(妙覚庵) 渡月橋の袂から左に折れ崖上の散策路をしばらく行くと、修行僧が岩を削って作ったトンネルに行き着く。これを抜け出た先(K 地)が、その昔、見仏上人が法華経六万巻を読誦した見仏堂の跡地とされるところで、そのお堂は妙覚庵とも呼ばれた。今は礎石すら残さないが、かつては「奥の院」と呼ばれ、三方を卒塔婆や仏像を刻む岩盤で囲まれた見仏堂跡は、全島霊地とされる雄島の中で最もそれらしい風情を漂わせている。 2.松吟庵と薬師堂 |
見仏堂跡(K 地)の南隣の崖上に、卒塔婆や仏像を刻んだ岩盤を南と西に控える平地がある。ここが、かつて瑞巌寺山内の小院、松吟庵(しょうぎんなん)と薬師堂(医国殿)があったところで、二院ともに海の際に東面して建てられていた。芭蕉が「おくのほそ道」で「落穂・松笠など打けふりたる」と形容した庵は、この松吟庵である。 松吟庵の北隣にあった薬師堂 薬師堂は医国殿とも呼ばれ、松吟庵の北隣にあった。元文元年(1736年)天嶺性空によって創建され、慈覚大師作の丈六(一丈六尺の高さ。約3.3m)薬師大仏が安置されていた。薬師堂は今跡形も無いが、被った火難の歴史は、隣り合わせた松吟庵と同一のものだったようである。 3.座禅堂(把不住軒)と頼賢の碑 |
渡月橋を渡って南に50mほど行くと、散策路を左右に分かつところに「奥の細道」と書かれた標柱がある。その先の小丘の頂に見えるのが、「おくのほそ道」に「雲居禅師の別室の跡」と書かれた座禅堂である。把不住軒とも呼ばれる。 雄島の南端に建つ「頼賢の碑」 座禅堂から更に南に行くと、国の重要文化財「頼賢の碑」を納めた六角形の覆堂が見えてくる。「頼賢の碑」の碑文によれば、頼賢は、観鏡房と号し、15歳の時に出家して長崎成福寺で修行。42歳で円福寺(瑞巌寺の前身)を訪れて第4代無隠円範(覚雄禅師)に弟子入りした。その後、松島を離れるが、再度来松し第6代空巌慧(覚満禅師)に参禅し、師の推薦により妙覚庵の庵主となった。 4.雄島で見られる句歌碑 芭蕉をはじめとする多くの文人墨客が、風雅の極みを求めて松島を訪れ、その印象をさまざまな文体で謳い上げた。雄島には、そうした先人の詩歌を刻む石碑が、板碑や墓碑と並び合って多数建てられている。ここでは、その中からおくのほそ道碑と芭蕉、曽良、大島蓼太、加賀千代女の句碑を取り上げて紹介している。 |
おくのほそ道碑は、寛政元年(1789年)に雄島の最北端に建てられた石碑で、高さは2mほど。瑞巌寺の「おくのほそ道」碑と同じ松島湾の章段が刻まれているが、こちらは碑文の最後に「朝よさを誰(たが)まつしまぞ片心」の句が添えられている。 「朝よさを誰まつしまぞ片心」を刻む句碑は、島のほぼ中央、石碑が林立した中に曽良の句碑と並んで建っている。「桃舐(ももねぶり)集」に見られるこの句は、「おくのほそ道」の旅へ出る直前の元禄2年(1689年)の春に詠まれたもので、これと同じ時期の句に、「去来文(ぶみ)」に載る「おもしろや今年の春も旅の空」や3月23日付落梧宛書簡に見られる「草の戸も住みかはる世や雛の家」がある。「草の戸も」の句は、後に「草の戸も住替る代ぞひなの家」に改められ「おくのほそ道」に採録された。 曽良句碑 芭蕉の句碑の右隣に曽良の「松島や鶴に身をかれほとゝぎす」の句碑がある。この句碑は、文化5年(1808年)に曽良の百回忌を記念し、諏訪の俳人素檗(そばく)が遠藤日人(あつじん)に依頼して建てたもので、書は日人の手によるもの。碑面に上の句と「信州諏訪産曽良同郷素檗建之
石工伊之助」の文字が刻まれている。 千代女句碑 加賀千代女の「たまされてきて月を見千松島」の句碑は、見仏堂跡とおくのほそ道碑との中間付近にあり、碑の高さは1mほど。「朝顔やつるべとられてもらひ水」の句で知られる千代女は、加賀国松任の表具屋に生まれ、17歳にして蕉門十哲の一人・各務支考の門弟となった。52歳の時に剃髪し、素園と号した。 蓼太句碑 芭蕉の句碑のやや南寄りに、大島蓼太が芭蕉の足跡をたどり松島で吟じた「朝きりや跡より恋の千松しま」の句碑がある。蓼太は、蕉門十哲の一人・服部嵐雪(雪中庵)の流れをくむ江戸中期の俳人で、信州国伊那大島生まれ。33歳で雪中庵3世を継ぎ、門人千人余を擁したといわれる。 |
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【 参考文献 】
松島町史 通史編1・2 資料編 1・2
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堀野宗俊著「瑞巌寺の歴史」(瑞巌寺刊)
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鈴木寅之助著「松島金石誌」(瑞巌寺刊)
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俳聖 松尾芭蕉・みちのくの足跡
総合目次
第2集 芭 蕉 と 松 島
スタートページ
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