| 山寺の蝉の声を考える |
![]() 弥陀洞 ![]() 性相院の東側 ![]() アブラゼミ ![]() ニイニイゼミ せみの写真提供:ネイチャー プロダクション 出典:広辞苑第五版(引用許可有) |
山寺の地形の特徴は、中谷の両側に切り立つ岩盤とそこに見られる大小様々な穴である。この穴は、もろい凝灰岩が、長年にわたる空気や水の作用により徐々に崩れてできたもので、風化穴と呼ばれる。 山寺で聞かれる蝉の声については、この凝灰岩と風化穴が大きく関わっていると考えられ、また、中谷に適度な広がりがあることも重要な要素の一つと思われる。 2000年の夏、「芭蕉と那須野が原」の取材で大田原を訪れたときのこと。夕暮れ時に那須神社に着いたのだったが、車を降りて参道に向かおうとしたとき、神社の森から聞こえてくる未体験の音響に耳を疑った。神社の参道は、社殿まで延々300m以上も続き、その両脇に、昼を暗くするほどの本数の杉や桧の巨木が育っている。 耳を疑わせた音風景(サウンドスケープ)の正体は、その巨木の森に棲む何百、いや何千、何万ものヒグラシの大合唱だった。聞き慣れた蝉時雨の筈ながら、参道を行くにつれて身体がその音響に包まれてしまう不思議な感覚に捕われ、立ち尽くしてしまった。 また、或る時は、急に電柱や軒下に張り付いて鳴き出すたった一匹の蝉の声に驚かされることもある。こうしたときの蝉の声はきまって甲高く、寝た子をおこすほどのボリュームがあるものだ。 一匹の蝉の声が耳に障ることがあれば、鎮守の森で、あれだけの数の蝉が同時に鳴いても協和さえ感じられこともある。その違いはどこからくるのだろうか。 それは、音が空気の振動として伝わることから、電柱など、高位置から発せられる音は遮るものが無いため直接耳に届きがちなのに対し、鎮守の森では、それぞれの蝉の声が、齢を重ねた木の皮や葉への反射を繰り返すたびに弱められ、木々の体内に溶け込むような作用を受けるからであって、蝉の発音器から鳴き声が発せられるたびにこれが繰り返されている。 山寺の蝉の声にも、同様のことが言える。すなわち、山寺の岩質が、火山灰や軽石を含めた細かな礫からできていて、大変やわらかく、表面が滑らかでない上に凹凸(おうとつ)ができていることから、岩に届いた蝉の声は、 |
一部を吸収しながら分散して反射し、岩盤にしみ込むように穏やかに聞こえるということであり、加えて、それに風化穴があることによって更にその度合いが高まることになる。 山寺の蝉論争について 芭蕉の「閑さや岩にしみ入蝉の声」の「蝉」が、どんな蝉であるか、単数か複数かなどにについて多くの議論があり、昭和の初期には、歌人・精神科医の斎藤茂吉(1882〜1953)と、夏目漱石門下で芭蕉研究家の小宮豊隆(1884〜1966)との間で激しい論戦が繰り広げられた。 |
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アブラゼミの鳴き声 【 試 聴 】 ○WAVファイルの使用許可をいただいたホームページ 「市川の自然」 http://www.bekkoame.ne.jp/~sibutaka/nature/index.html ミンミンゼミとアブラゼミとヒグラシの鳴き声 |
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「日本の音風景100選」に選ばれている蝉の声 <「日本の音風景検討会」の選定審査の結果を受けて、環境庁が選定> ○ 山形県 「山寺の蝉」 ○千葉県 「麻綿原(まめんばら)のヒメハルゼミ(姫春蝉)」 ○新潟県 「尾山のヒメハルゼミ(姫春蝉)」 ○石川県 「本多の森の蝉時雨」 |
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俳聖 松尾芭蕉・みちのくの足跡
総合目次
第1集 芭 蕉 と 山 寺
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