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| 山崎藤吉著 「芭蕉全傳」 | ||||||
| 第 一 編 第 六 章 天和時代 五 芭蕉庵再建(二度目) |
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| ○天和三年 40 |
芭蕉甲斐から戻る 芭蕉庵再建勧化文 |
_ | 第六章 天和時代 五 芭蕉庵再建(二度目) ← 五月、其角が勧誘に従って、甲斐から江戸へ帰って来た。 |
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| 新芭蕉庵の実見記 | _ | 天和三年秋九月 潜汲願主之旨 濺筆於敗荷之下
山 素 堂 之に寄附名簿が添へてあった。 寄附芳名総へて五十余人、金あり家財あり、彼の芭蕉六物の一で有名な四山の大瓢は、此時門人北鯤が寄附したものである。 初冬の頃落成して之に移った、猶落着を快からせん為に、芭蕉一株を植ゑて旧観を存することにした、芭蕉は再び草庵に入ることを得たとて、 (続深川集に「ふたたび芭蕉庵を造りいとなみて」の前書がある) 霰きくや此身はもとの古柏 と吟じ、其角は此の事を記して。 三更月下入 と書いた。 是によって、素堂が啻(ただ)に芭蕉の俳諧の上の助言者であった計りでなく、物質的にもよく尽して居ることが知られる。 新芭蕉庵 実見記 此の再建の頃の芭蕉と芭蕉庵とを、現実に見た門人小川破笠の実見談を掲げる、此の実見談は、享保二十年二月八日、破笠が市川白筵(柏莚。二代目市川団十郎の俳号)に語った話で、白筵の「老の楽」に載って居る。 (一二六頁) |
| 破笠履歴 |
_ | 桃青深川のはせを庵、へつゐ二つ、茶碗十を、菜切庖丁一枚ありて、台所の柱にふくべを懸けてあり、二升四合程も入べき米入なり、杉風文鱗弟子の見次にて、米無くなれば又入れてあり、若弟子よりの米、間違ひて遅き時ふくべ明けば、自ら求めに出られしが、其頃笠翁子(破笠)は二十三か二十四の時の由、翁(芭蕉)は六十有余の老人と見えし由、其頃翁は四十前後の人か、(中略)嵐雪なども、俳情の外は翁をはづし逃げなど致し候由、殊の外気がつまりて面白からぬ故なりと、翁は徳の高き人なり、今(享保二十三年頃)大様翁の像に衣をきせ候へ共、笠翁の覚え候由、常に茶の紬の八徳のみ着申され候、(中略)翁の仏壇は、壁を丸く掘ぬき、内に砂利を敷き、出山の釈迦の像を安置せられし由、机一脚、まのあたり見たりとの笠翁物語り。・・・ 芭蕉翁は、藤堂和泉守様御家来藤堂新七郎殿の料理人のよし、笠翁物語り。・・・ (老の楽) 破笠が二十三、四歳、芭蕉が四十歳前後といへば、天和から貞享にかけての事であらう、又芭蕉が文鱗から出山の釈迦の像(一寸一分)を貰ったのは、貞享二年頃のことと見えるから、此の実見談は、貞享二年頃のことと見るべきであらう。 破笠履歴 破笠は江戸の人、通称を小川平助と云ひ、名は観、俳名は宗宇、又夢中堂卯観子と号し、江戸桶町に住す、多能にして画をよくし、一蝶に学びて画名を一蝉といふ、陶器製作の術に妙を得て名高い、初め俳諧を露言に学び、後蕉門に入った、少時放蕩に路を誤り、親族に見放されて家を出で、極貧に苦んだ、貞享年中、其角が照降町に居た頃、放蕩仲間で同居して居たが、着る布団さえも無かったといふ、其頃の述懐に。 (一二七頁) |
| 芭蕉六物の一 ・四山の大瓢 |
_ | 乞食にも斯うはなられぬかゞしかな の句がある、其角が貞享四年に撰んだ「続虚栗」に、破笠の入句が見え始めて居る所を見ると、貞享頃から蕉門に入ったものと見える、後津軽侯に召出され、食録を受けた、延享四年六月三日歿す、年八七(五)。 破笠筆の芭蕉の肖像がある、元禄六年の所へ掲げる。(図版の掲載は省略) 四山の大瓢(おおふくべ) 北鯤が寄附した大瓢は、長さ二尺三、四寸、直径五寸程の細長いものであった、芭蕉は此のふくべの銘を作った。 物ひとつ瓢はかろきわが世かな
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| ○天和四年 41 |
_ | の名が上にあって下に素堂の銘が二行になって居る。 とある。 焼跡は蚤蚊多し 焼跡といふものは、蚤蚊の多いものと聞いて居たが、新芭蕉庵も其通りで、蚤蚊に苦しんだらしい。 某年某月(天和三年十月?)七日附、三碩宛芭蕉書状 傘下駄御持せ被 ほね柴や斯と見るより蝶の殻 深川は、冬になっても蚊の多く居ることは、世人の恰く知って居ることである。 天和四年(二月貞享と改元、四十一歳)新年になっても、新年の喜びを感じないで、却って淋しい苦吟を述べて居た。 元旦や思へば淋し秋の暮れ
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| 第 一 編 第 六 章 天和時代 五 芭蕉庵再建(二度目) | p.21 |
山崎藤吉著「芭蕉全傳」 第1版発行:明治36年 第2版:大正5年 第3版:昭和10年、16年 |
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