| 松尾芭蕉の旅 おくのほそ道 | ||||
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| おくのほそ道 二十四 | ||||
| 鹽竈明神の章段 |
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| 早朝塩がまの明神に詣。 | 早朝、鹽竈神社に参詣する。 | |||||
| 国守再興せられて、宮柱ふとしく彩椽きらびやかに、石の階九仞に重り、朝日あけの玉がきをかゝやかす。 | 鹽竈神社はかつて藩主伊達政宗公が再興されて、宮柱は太く、彩色した垂木はきらびやかで美しく、石段は極めて高く重なり、朝日が朱色の垣根を輝かせている。 | |||||
| かゝる道の果、塵土の境まで、神霊あらたにましますこそ、吾国の風俗なれと、いと貴けれ。 | このような奥地の片田舎であっても、神のご利益があらたかでおられることこそ我が国の風俗であり、大変貴いことと思われた。 | |||||
| 神前に古き宝燈有。かねの戸びらの面に文治三年和泉三郎寄進と有。 | 社殿の前に古い燈篭がある。鉄の扉の面に、「文治三年和泉三郎寄進」と彫られている。 | |||||
| 五百年来の俤、今目の前にうかびて、そゞろに珍し。 | 五百年も前の様子が今、目の前に浮かんできて、ただ無性に珍しいと思われた。 | |||||
| 渠は勇義忠孝の士也。佳命今に至りてしたはずといふ事なし。 | 和泉三郎は、勇気、節義、忠孝を兼ね備えた武士である。誉れ高い名前は今に至っても慕わないものはいない。 | |||||
| 誠人能道を勤、義を守べし。名もまた是にしたがふと云り。 | 誠に人はよく道理をわきまえた行いをし、節義を守るべきである。「名声もまたこれに自然についてくる」というがまさにその通りだ。 | |||||
| 日既午にちかし。船をかりて松嶋にわたる。其間二里餘、雄嶋の磯につく。 | 日はもう正午に近い。船をやとって松島に渡った。塩釜から二里ばかり船を進めて、雄島の磯に着いた。 | |||||
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[語 釈] |
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「陸奥国一の宮」の鹽竈神社[資料]。創建年代は不明。祭神は、「武」の神、武甕槌神(たけみかづちのかみ)と経津主神(ふつぬしの神)、および当地に製塩の方法を伝授したという鹽土老翁神(しおつちのおじのかみ)。 |
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「国主」は、仙台藩祖伊達政宗。 鹽竈神社の「再興」は、慶長八年(1603)八月、仙台城に入った政宗が、領内の主な社寺を修造した中の一環で、慶長十二年六月に社殿などが造営されている。現在の社殿は、四代藩主綱村が元禄八年(1695)に着工してから吉村の代の竣工まで、九年の歳月をかけて造られたもの。 |
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彩色した椽(たるき。垂木)のこと。垂木は、屋根の裏板などを支えるために、棟から軒にわたす長い木材[資料]。 |
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「塵土」は、「けがれた俗世間」または「国土」。ここでは「国土」の意。 「塵土の境」は「国土の境い目」、すなわち「辺土」と同意で、都から遠く離れた土地。片田舎。 |
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「古き宝燈」は、左宮・右宮の拝殿に向って右側に建つ鉄製の燈篭[資料]。奥州藤原三代秀衡の三男泉三郎(和泉三郎)が文治三年(1187)に寄進したもの。「文治の燈篭」と呼ばれる。 |
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「かねの戸びら」は「文治の燈篭」に装着されている鉄製の扉。「三日月」の形に刳(く)り貫いた右の扉に「奉寄進」、「日」の形に貫かれた左の扉に「文治三年七月十日和泉三郎忠衡敬白」の文字が刻されている[資料]。 |
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「渠」は「首領」の意。 「勇義忠孝の士」については、蓑笠庵梨一の「奥細道菅菰抄」から引用して次に記す。 勇義忠孝の士とは、按ずるに、義経奥州に居給ふうちに、秀衡死す。こゝにおゐて、嫡子錦戸太郎、次男伊達次郎を初として、一属ことごとく反逆して、義経を攻む。忠衡ひとり義経にしたがひ、高館にて戦死す、と云り。夫れよく父の遺命を守りて、義経を捨ざるは孝也。よく義経に仕るは忠なり。兄にしたがはずして義経に従ふは義也。終に戦死するは勇なり。 (「奥細道菅菰抄」) |
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「佳名」のことで、名声、誉れの高い名。 |
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往時の瑞巌寺側の海岸線は、今より500mも西寄りで、一森山の裾まで寄せていた。船着場があった位置については[資料]を参照。 |
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松島への到着地点は、本文では「雄島の磯」となっているが、「随行日記」にこうした記述がなく、一行は、現在の観光桟橋付近にあった船着場に到着したものと見られている。 橘南谿の「東遊記」に、「舟を雄島に附て、上り見るに、雄島頗る大なり」とあることから、観光の目的によっては、まず雄島に舟を着けて島内を見物し、それから松島に上陸する、といったことも普通に行われていたものと見られる。雄島の往時の船着場は[資料]を参照。 |
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本テキストは、俳聖 松尾芭蕉・生涯データベース
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