| 松尾芭蕉の旅 おくのほそ道 | ||||
| 俳聖 松尾芭蕉・生涯データベース |
| おくのほそ道 五 | ||||
| 仏五左衛門の章段 |
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| 卅日、日光山の梺に泊る。 | 三十日、日光山の麓の家に泊る。 | |||||
| あるじの云けるやう、「我名を佛五左衛門と云。 | そこの主人が言ったことには、「私は名を仏五左衛門といいます。 | |||||
| 萬正直を旨とする故に、人かくは申侍まゝ、一夜の草の枕も打解て休み給へ」と云。 | 何につけても正直を信条としていることから、世間の人は仏などと申しておりますので、一夜の旅寝もくつろいでお休みになってください」という。 | |||||
| いかなる仏の濁世塵土に示現して、かゝる桑門の乞食順礼ごときの人をたすけ給ふにやと、あるじのなす事に心をとゞめてみるに、 | どのような仏が、けがれたこの世にあらわれ、このような僧侶姿をした乞食、順礼などという者をお助けになるのかと、主人の振る舞いに心をとどめてみると、 | |||||
| 唯無智無分別にして、正直偏固の者也。 | ただ智恵や分別を利かしているわけではなく、正直一点張りの人物であり、 | |||||
| 剛毅木訥の仁に近きたぐひ、気禀の清質尤尊ぶべし。 | まさに、「論語」にある「剛毅朴訥仁に近し」を地でいくような人物で、この生まれつき清らかな気立ては、最も尊ぶべきである。 | |||||
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[語 釈] |
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宿泊の日を「卅日(みそか。三十日)」としているが、曽良の「随行日記」に「四月朔日 (中略) 日光ヘ着。(中略) 未ノ下尅迄待テ御宮拝見。終テ其夜日光上鉢石町五左衛門ト云者ノ方ニ宿」とあることから、実際は四月一日であったことが分かる。また、元禄二年の三月は小の月で、晦日(みそか)は二十九日となる。これを「三十日」としたのは、切れのよい日付にするための虚構、宿泊日を一日ずらしたのは、参詣の日「(四月)一日」を強く印象づけるための虚構と見られる。 |
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「草枕」と同じく「旅寝」の意。旅の夜に、草を結んで枕としたことから。 |
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じょくせじんど。濁りけがれたこの世。「濁世」は「濁りけがれた世」、「塵土」も同義。鹽竈神社の章段では、「かゝる道の果、塵土の境まで」と、「塵土」を「国土」の意で使用。 |
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「桑門」は僧侶。「乞食(こつじき)」は、桑門の行の一つで、家々に食を乞い求めて歩くこと、またはその人。 |
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ここでは「智恵・分別が無い」の意ではなく「(成果を期待して)智恵や分別を利かしているわけでなく」の意。 |
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かたくなに正直な人。正直一点張りな人。 |
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「論語」子路篇の「剛毅木訥近 |
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生まれつき清らかな気質(気立て)。「気禀(きひん)」は「持って生まれた気質」。 |
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本テキストは、俳聖 松尾芭蕉・生涯データベース
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