| 松尾芭蕉の旅 野ざらし紀行 | ||||
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| 野ざらし紀行 三 | ||||
| 大井川越え、小夜の中山 |
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| 大井川越る日は終日雨降ければ、 | 大井川を越える日、終日雨降りなので、一句詠んで、 | |||||
| 秋の日の雨江戸に指折らん大井川 千里 | この雨降りの秋の日に、江戸の人々は日にちを指折りかぞえ、今日は大井川あたり、川止めにあってはいないかなどと、みんなで話しているのではないかな。 | |||||
| 馬上吟 | 馬上で詠んだ句 | |||||
| _道のべの木槿は馬に食はれけり | むくげの花を馬の上から眺めていると、あれよという間に、その花を馬が食べてしまったよ。そうでなくても短命な花であるのに。 | |||||
| 廿日余の月かすかに見えて、山の根際いと暗きに、馬上に鞭をたれて、数里いまだ鶏鳴ならず。杜牧が早行の残夢、小夜の中山に至りて忽驚。 | 未明の空に二十日月がかすかに見えて、山の麓あたりがたいそう暗い中を、鞭を垂れたまま馬の足取りにまかせ、数里を旅してきたが、いまだ、鳥の鳴き声が聞こえてこない。杜牧が「早行」の詩に詠んだあの夢見心地のまま、馬に揺られ小夜の中山まで来たところで、やにわに目が覚めた。 | |||||
| _馬に寝て残夢月遠し茶の煙 | 馬上でうとうとしながら旅を続けて、やにわに夢見心地から覚めると、有明の月が遠くに見え、もう、村里に朝茶を炊く煙がたなびているよ。 | |||||
| [語 釈] | ||||||
静岡県中部を流れ、駿河湾に注ぐ川。戦国(元亀以降)、江戸期は、洪水で流れが変わった場合も、この川をもって駿河と遠江(とおとうみ)の境とした。「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と歌われた大井川は、江戸時代、架橋や渡船が許されず、川越えは、肩車や輦台(れんだい)で行われ、日常的な降雨でも川止めとなるなど、東海道一番の難所と言われた。 |
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「早行」は唐の詩人杜牧の詩。これに「残夢(見残した夢、または、目が覚めても残る夢見心地の気分)」を詠み入れた「垂 |
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さや(さよ)のなかやま。歌枕。佐夜の中山とも。静岡県掛川市と金谷町との境にある峠道。峠からつづら折の坂を下ると、江戸から二十五番目の日坂(にっさか)宿に至った。芭蕉が馬上で見た「茶の煙」立つ集落は、この日坂の宿。 |
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たちまちおどろく。「驚く」に「はっとして目が覚める」の意味がある。 |
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